少量化学療法との出会い・・とこれから

KM-CARTを始めて5年ぐらい経った時、胃がん患者さんの I さんが来院されました。

少しピリピリした様子で、すごく辛そうにされていたのを、覚えています。KM-CARTについてもすごく質問されて、いろいろ説明をしました。が、半信半疑の感じが伝わってきます。
そりゃそうです。
場末の小さい病院で、どの大病院でも謳ってない腹水の治療をしますって言われても、詐欺かもしれません。。
でもまあ、KM-CARTをさせていただくと、すごくおなかが楽になり、信用してくれるようになりました。

そこから、いろんな話を伺いながら、腹水治療を続けていきました。
I さんはウェブに詳しくて、私はすごく勉強になったんです。 I さんの治療は、私には楽しい時間でした。

ある日 I さんは「御飯が食べられないんです」と。
胃がんで食べられないのは、かなり厳しい症状です。
僕の経験では、食べられなくなってから回復した人は、一人も見たことも聞いたこともありませんでした。

I さんは、不屈の人でした。
次の週、「僕は東京の治療をうけてきます」と食べられない体を引きずって、僕の書いた紹介状を持って新幹線に乗って行きました。

その後、まったく病院に連絡もありません。
正直なところ、最悪の事態を僕は考えていました。
1か月ほどしたとき、 I さんから連絡が。
「もう大丈夫です。1人前しっかり食べられます!」

この治療が、銀座通り並木クリニックの「少量化学療法」でした。
抗がん剤を通常の計算量の10分の1ぐらいの少量を、毎週投与する方法です。休眠療法や、メトロノミックセラピーなど、そういう治療はいくつか知っていましたが・・・これほどの効果を感じたのは、初めてでした。
I さんも、その後長く元気に過ごされました・・

I さん以来、僕は患者さんには東京への受診をよくお勧めします。もちろん、標準治療は大切なのですが、より選択肢を広げてくれた治療法です。
僕はもちろん、普通の消化器内科医です。標準治療を肯定こそすれ、否定はしません。少量化学療法が夢の治療だ、とも申しません。

でも、標準治療の選択肢がなくなったあと。。。手を離された方はどうしたらよいのか?
なんでもやってみたい。
自分の体の病気に、自分が期待できる治療を試してみたい。

その気持ちをサポートすることは、すごく大事だと感じます。
なので、僕は患者さんがどんな治療を探してきても、否定はしません。

お金がかかりすぎていなければ、ですけれども。
とにかく患者さんが満足いくように、相談していきたいと思っています。